東京高等裁判所 昭和62年(ネ)3293号 判決
一 当裁判所も、控訴人らの被控訴人に対する請求は、失当としてこれを棄却すべきものと判断するものであるが、その理由は後記二のとおり付加するほか、原判決理由説示と同一である(ただし、原判決二一枚目裏九行目、一〇行目の「弁論の全趣旨により真正に成立したことが認められる乙第二号証の一、二」を削除し、二四枚目裏七行目の「6(一)末段」を「5(一)(1)末段」に改める。)から、ここにこれを引用する。
二 控訴人らは、被告製品における乾燥板の下降状況を毎秒三五コマの速度で撮影した写真(甲第二四号証)によると、乾燥板はA傾斜面の中途(五コマ目の位置)までは摺動しながら徐々に降りてくるが、五コマ目から七コマ目までは全く又はほとんど摺動することなくほぼ自然に落下し、七コマ目においてB傾斜面に衝突していることを前提として、被告製品においては、乾燥板はA傾斜面の中途の希望位置において自然落下しB傾斜面に衝突しているのであつて、その希望位置から起動角の形成に至る七コマ目までの時間はせいぜい三五分の三秒にすぎないことが明らかである旨主張する。
しかしながら、前掲甲第二四号証によれば、被告製品において、乾燥板は一コマ目から五コマ目まではA傾斜面を下降し、六コマ目でその先端がB傾斜面の右端付近に達し、さらにB傾斜面にわずかに入つた九コマ目で茶葉が落下し始めているものと認められるが、その五コマ目から七コマ目までの連続写真を詳細に検討しても、乾燥板が控訴人ら主張のように五コマ目から七コマ目まで全く又はほとんど摺動することなくほぼ自然に落下し、七コマ目においてB傾斜面に衝突しているものと認めることはできない。被告製品の乾燥板ガイドのA傾斜面は傾斜角ほぼ七二度であるのに対しB傾斜面は傾斜角ほぼ四二度であるから、乾燥板がA傾斜面を下降してB傾斜面に達した段階で乾燥板にブレーキがかかるものと推認されるが、このことが物品の起動角の形成に何らの影響も及ぼさないことは原判決指摘のとおり(原判決二四枚目裏一行目ないし七行目参照)である。そして、ほかに、控訴人ら主張事実を認めるに足りる証拠はなく、かえつて、被告製品を撮影した写真である前掲乙第一六号証の二によれば、被告製品の乾燥板ガイドには乾燥板が右ガイド上を連続して摺動した軌跡が存していることが認められ、このことは、乾燥板が乾燥板ガイド上を自然落下することなく(その途中で自然落下していれば、その部分には摺動した軌跡は残らないことになる。)下降していることを示している。
したがつて、控訴人らの前記主張は、被告製品において乾燥板が前記五コマ目から七コマ目では全く又はほとんど摺動することなくほぼ自然に落下し、七コマ目においてB傾斜面に衝突しているとの前提が既に誤つているから、到底採用することができない。
また、控訴人らは、被告製品においては、茶葉の落下が第一次落下と第二次落下に分かれており、第一次落下の始まりがいわゆる静止摩擦を破る傾斜角のためにもたらされたものであるとすれば、従来製品におけるように、茶葉が一挙に連続して落下してしまうはずであるのに、被告製品において二段に分かれて落下していることは、第一次落下が静止摩擦を破る傾斜面よりも小さい角度の起動角で始まつていることを意味している旨主張する。
控訴人らの右主張は、被告製品においては、乾燥板の衝突の衝撃によつて茶葉の静止状態が破られた時点で茶葉の第一次落下が始まり、静止摩擦を破つた時点で第二次落下が始まつている趣旨と理解される。
しかしながら、乾燥板の衝突の衝撃によつて茶葉の静止状態が破られ(その後、動摩擦に打ち勝つて)茶葉が動き始めると、その茶葉に静止摩擦が働くことは原理上あり得ないことであつて、茶葉が乾燥板の衝突の衝撃によつて静止状態を破つて動き出し、次に乾燥板が静止摩擦を破る傾斜角度に達したときに一挙に落下するという推論は成り立たないから、控訴人らの前記主張はその点において誤つている。そして、前掲甲第二四号証によれば、被告製品においては茶葉は九コマ目から二〇コマ目までの間に落下し、その間一四コマ目から一六コマ目付近ではその落下量が少ないことが認められるが、この現象は、前掲乙第一六号証の二によれば、被告製品の乾燥板の摺動端には円筒状のパイプが結合されていることが認められるから、茶葉が落下し始めてもこの円筒状のパイプにより茶葉の一部が一たんせき止められた後そのせきを越えて落下しているためと推認され(前掲甲第二五号証によれば、同号証に示された従来製品に同様な円筒状のパイプが取り付けられているか否か明らかでなく、仮に右パイプが取り付けられているとしても、従来製品と被告製品とは乾燥板ガイドの構成を異にするから、両者における茶葉の落下状況が一致するとは限らない。)、これをもつて被告製品においては茶葉の落下は二段に分かれており、第一次落下が静止摩擦を破る傾斜面よりも小さい角度の起動角で始まつていることを意味するということはできない。
したがつて、控訴人らの前記主張は理由がない。
三 以上のとおりであるから、原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとする。